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経営・法人化 2026.05.18 公開 2026.05.18 更新 読了 約8分

法人化(法人成り)すべきタイミングは?年商の目安と節税メリットを税理士が解説

村上 直樹
村上 直樹税理士・つばさ税理士事務所 所長
事業の成長と法人化をイメージした写真

事業が順調に伸びてくると、多くの方が「そろそろ法人化したほうがいいのかな」と考え始めます。結論から言うと、判断の目安は「課税所得(利益)がおおむね年800万〜900万円を超えるあたり」「売上が1,000万円を超えて消費税が視野に入ってきたとき」の2つです。ただし、これはあくまで入り口。実際には節税メリットと、社会保険などのコスト増を天秤にかけて決める必要があります。この記事では、その判断の考え方を整理します。

そもそも法人化(法人成り)とは?

法人化(法人成り)とは、これまで個人事業主として行ってきた事業を、株式会社や合同会社といった「法人」に切り替えることをいいます。事業の中身が同じでも、税金の計算方法、社会保険の扱い、信用力などが大きく変わります。

個人事業の場合、もうけ(所得)には所得税がかかります。所得税は所得が大きいほど税率が上がる「累進課税」で、住民税と合わせると最高で約55%に達します。一方、法人のもうけにかかる法人税は、中小企業であれば所得800万円までが軽減税率、それを超える部分も含めた実効税率はおおむね23〜34%程度です。利益が大きくなるほど、法人のほうが税率面で有利になりやすい——これが法人化が節税につながる基本的な理由です。

税理士に法人化を相談する経営者
法人化は「いつ」「どの形で」行うかで結果が変わります

法人化を判断する2つの目安

法人化を考えるきっかけは、大きく「利益が増えてきた」「売上が1,000万円を超えそう」の2パターンです。それぞれの目安を見ていきましょう。

① 利益(課税所得)で見る目安

もっともよく言われるのが、課税所得がおおむね800万〜900万円を超えたあたりという目安です。このラインを超えると、個人の所得税率が法人税の実効税率を上回りやすくなり、税負担の面で法人化のメリットが出てきます。

ここで注意したいのは、目安となるのは「売上」ではなく「利益(経費を引いたあとのもうけ)」だという点です。売上が3,000万円あっても、経費が2,200万円かかっていれば利益は800万円。逆に売上が小さくても利益率が高い事業なら、早めに法人化の効果が出ます。

② 売上(消費税)で見る目安

もう一つの目安が消費税です。個人事業主は、課税売上が1,000万円を超えると、その2年後から消費税の納税義務が発生します。ここで、あえてそのタイミングで法人化するという選択があります。新しく設立した法人は、資本金1,000万円未満であれば原則として設立から最大2期は消費税が免税になるためです。

インボイス制度の影響に注意

かつては「法人成りで最大2年の消費税免税」が大きなメリットでした。しかし、インボイス制度の登録事業者になると、設立直後でも消費税の納税義務が生じます。取引先が課税事業者中心の場合、免税メリットは実質的に小さくなっているケースが増えています。自社の取引先の状況を踏まえた判断が必要です。

法人化の主な節税メリット

税率の差以外にも、法人だからこそ使える節税の仕組みがあります。代表的なものを挙げます。

法人化による節税のイメージ
税率の差だけでなく、使える「仕組み」が増えるのが法人化のメリットです

見落としがちなデメリットとコスト

法人化はメリットばかりではありません。むしろ、ここを見落として「こんなはずじゃなかった」となる方が少なくありません。

節税できる金額より、社会保険料の増加分のほうが大きい——というケースは実際にあります。「税金が安くなる」だけで判断せず、社会保険を含めた手取りの総額で比べることが大切です。

ベストなタイミングの考え方

以上を踏まえると、法人化のタイミングは次のように整理できます。

逆に、利益が不安定なうちや、社会保険の負担増を吸収できる体力がないうちは、急いで法人化しないほうがよいこともあります。「周りが法人にしたから」ではなく、自分の数字で判断することが何より重要です。

法人化の手続きと流れ

実際に法人化する場合、おおまかには次のような流れになります。

とくに「決算期をいつにするか」「資本金をいくらにするか」「役員報酬をいくらに設定するか」は、後の税金や消費税に影響する重要な判断です。設立前に決めておくべきことが多いため、登記をする前の段階で税理士に相談することをおすすめします。

まとめ:数字を試算してから決める

法人化の目安は「利益800万〜900万円」「売上1,000万円」が入り口ですが、最終的な判断は、節税メリットと社会保険を含めたコスト増を、自分のケースで具体的に試算して比べることに尽きます。一般論だけで決めると、思わぬ負担に後から気づくことになりかねません。

つばさ税理士事務所では、「法人化した場合・しなかった場合」で手取りがどう変わるかのシミュレーションを行っています。判断に迷ったら、まずは無料相談で現状の数字をお聞かせください。

この記事の内容について

本記事の税率・金額・制度は、わかりやすさを優先した一般的な目安です。実際の税額や有利・不利は、事業内容・所得・家族構成・自治体などによって異なります。また、税制は改正されることがあります。判断の際は最新の情報を確認のうえ、税理士など専門家にご相談ください。

よくある質問

売上がいくらになったら法人化すべきですか?
よく言われるのは「売上1,000万円」「利益800万〜900万円」ですが、本当に重要なのは売上ではなく利益です。利益率の高い事業なら売上が小さくても法人化のメリットが出ますし、逆もあります。自分の利益額で判断してください。
合同会社と株式会社、どちらがいいですか?
設立費用が安く手続きも簡単なのは合同会社です。一方、社会的な信用や将来の資金調達・上場を考えるなら株式会社が向いています。BtoBで取引先からの見え方を重視するなら株式会社、コスト重視で小さく始めるなら合同会社、という選び方が一つの目安です。
法人化のデメリットで一番大きいものは何ですか?
多くの場合、社会保険料の負担増です。法人は社長一人でも加入義務があり、会社負担分が発生します。節税額より社会保険の増加分が大きくなることもあるため、必ず両方を含めて比較することが大切です。
個人事業のままインボイス登録した場合との違いは?
インボイス登録は消費税の話、法人化は事業形態の話で、別の論点です。ただし両者は関係します。法人成りによる消費税の免税メリットは、インボイス登録をすると実質的に小さくなります。インボイス制度の判断とあわせて検討することをおすすめします。
村上 直樹
Written by 村上 直樹(税理士)

つばさ税理士事務所 所長。中小企業の経営支援に10年以上携わり、創業・法人化・事業承継の相談を数多く手がける。「専門用語を使わず、経営者の言葉で話す」ことを信条とする。

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